基幹システムの刷新にあわせて、システム間の連携を「ファイルを介した連携からAPI連携へ」切り替え、API管理基盤を導入する事例が報じられています。既存システムを作り替えずにAPIやiPaaS(クラウド型の連携基盤)でつなぎ直す「連携型モダナイゼーション」も注目されています。

背景にあるのは、システムそのものよりも「システムの間」が管理されていないという問題です。本記事では、連携を全社で設計し直すための考え方と進め方を整理します。

課題 ― 連携は「誰も設計していない全体像」になっている

多くの企業では、システム連携は個々の導入プロジェクトの中で作られます。SaaSを入れるたびにCSVの受け渡しが一本増え、改修のたびに個別のバッチが追加されます。一本ずつは合理的な判断でも、積み重なると次のような状態になります。

  • どのシステムがどのデータを、どこへ、いつ渡しているかを説明できる人がいない
  • あるシステムを止めたとき、どこに影響が出るかが分からず、刷新や廃止の判断が進まない
  • 連携が障害の原因になったとき、担当ベンダーの境目で切り分けが止まる

この状態を、配線が絡み合った「スパゲッティ化」と呼ぶことがあります。

なぜ今、連携の設計が問われるのか

理由は二つあります。一つは、クラウドやSaaSが増えて連携の本数そのものが増え、方式もばらばらになっていることです。もう一つは、生成AIやAIエージェントを業務に組み込む動きです。AIが社内データを参照し、業務システムを操作するには、どのシステムにどの経路で、どの権限で接続するかを決めなければなりません。連携が整理されていない企業ほど、AI活用の範囲が広がりません。

連携方式をどう使い分けるか

「すべてAPIにすべき」とは限りません。方式ごとに得意な場面があります。

方式 向いている場面 注意点
ファイル連携 大量データの定時一括処理(会計の月次締め等) 鮮度が低く、失敗に気づきにくい
API連携 都度の照会・登録(在庫照会、受注登録等) 相手側の停止がそのまま業務停止になりうる
イベント連携 一つの出来事を複数システムへ通知する(受注確定の配信等) 全体の流れが見えにくく、追跡の仕組みが要る

判断の軸は、データがどれだけ新しくなければならないか(鮮度)、相手システムの変更や停止の影響をどこまで受けてよいか(結合度)、連携が止まったときに業務がどれだけ困るか(業務影響)の三つです。この軸を全社の基準として定めておくと、案件ごとに方式がぶれません。

進め方 ― 連携を全社の資産として管理する

1. 連携台帳をつくる:連携元・連携先・データ・方式・頻度・担当を一覧にします。最初から全量を目指さず、刷新予定の基幹システムの周辺から始めます。台帳はアプリケーションポートフォリオ管理の台帳とひもづけると、廃止判断の影響範囲を示す材料になります。

2. 方式標準を決める:前述の使い分け基準に加え、認証・エラー時の再送・ログの残し方を共通ルールにします。APIゲートウェイ(APIの入口を集約し、認証や流量制御を一括で行う仕組み)を置くかどうかも、この段階で判断します。標準はアーキテクチャガバナンスの原則の一つとして位置づけると、新規案件の起案時に参照されるようになります。

3. 連携ごとのオーナーを決める:データを出す側と受ける側のどちらが仕様変更と障害対応に責任を持つかを、連携単位で明記します。複数ベンダーが関わる場合は、契約の境目に責任の空白が生まれやすいため、発注者側で整理する必要があります(マルチベンダー時代のベンダーマネジメントも参照)。

よくある失敗と回避策

失敗 回避策
連携基盤の製品選定から始める 台帳で現状を把握し、方式標準を決めてから選ぶ
既存連携を一斉に作り替えようとする 刷新・改修の機会に合わせて段階的に移す
台帳が更新されなくなる 新規連携の起案書に台帳更新を組み込む

まとめ

システム連携は、個々の案件の付属物ではなく、全社で設計し管理すべきアーキテクチャの一部です。台帳で現状を見える化し、方式を基準で使い分け、連携ごとに責任者を置く。この三点が揃えば、刷新もAI活用も「つなぎ方」の段階で止まることが少なくなります。EAの全体像はEAの始め方もあわせてご覧ください。

FAQ

Q. iPaaSやAPI管理基盤は導入すべきですか。 連携の本数が多く、方式や監視が個別になっている場合は有力な選択肢です。ただし、導入前に台帳と方式標準を整えないと、基盤の上に同じ混乱が再現されます。

Q. ファイル連携は時代遅れなのでしょうか。 いいえ。大量データを定時に一括で渡す用途では、今も合理的な方式です。問題は方式そのものではなく、選んだ理由と失敗時の扱いが決まっていないことです。

Q. 連携台帳は誰が管理すべきですか。 EA推進やIT企画の部門が全体を管理し、各連携の内容は前述のオーナーが更新する分担が機能しやすくなります。

参考資料